ご挨拶

UCR-WG『サービスイノベーション研究会』発足のご挨拶

東京大学産学連携本部長 藤田隆史

産学連携本部では 世界に貢献する価値を創出すべく、産学が検討段階討議を進めるProprius21の産学連携フレームワークのもと様々な共同研究を創出してきております。 これまでは、主として、単一企業と学内複数部局との共同研究創出でしたが、この度、複数企業と複数部局との共同研究のモデルを設け、社会もしくは日本産業にとってよりインパクトの大きい共同研究の立案・企画が可能になる試みを産学連携本部の主導のもと働きかけました。

その試みの一つとして『サービスイノベーション研究会』があります。その試みを知って頂くため 産学連携本部主催で『第7回科学技術交流フォーラム、「価値を共創するサービスモデリング」』を 平成18年10月、本学弥生講堂にて開催しました。そこでは日本を代表するITベンダーと情報理工学系研究科、工学系研究科、人工物工学研究センター、情報学環、先端科学技術センターの研究陣によるサービスを科学する心で関係科学技術紹介やパネル討論を行いました。聴衆の方々の反応も非常に興味をもって今後の活動を期待するというものが多数を占めました。

これら活動を踏まえ平成18年11月より本格的に産学連携本部のもとUCR-WG『サービスイノベーション研究会』を立ち上げました。本研究会の組織の特徴は、委員長 情報理工学研究科 武市正人教授のもと上記の複数部局による研究陣、NEC、富士通、日立、日本IBM等の複数IT企業の研究員の方々を中心にしたマルチデシプリナリーなアプローチをとっている点です。

研究会の目的は、

“現在サービス産業のGDPに占める比率、さらには就業人口の比率は共に7割といわれ経済構造がサービスへと比重が移行している。一方わが国ではその生産性はモノつくり分野と比較して必ずしも高いとは言えない。モノ造り日本の次の課題はこのサービス分野の革新にあると言われている。本研究会では、産学連携のもと研究ドメインを定め、サービスの解析・構造の分析を通してこのサービス分野の主要な課題を明確にして、次の具体的研究への布石を打つことを狙いとする。”

であります。

今後、必要ならばサービス産業の方々を招聘し、より骨太な共同研究が推進されることを望みます。

サービスイノベーション研究会の発足にあたって

委員長・東京大学情報理工学系研究科 武市正人

わが国を含め先進国においては、サービスに関わる経済的価値を産業比率で見たとき、実質GDPの70%、雇用者数でもほぼ70%に達しているといわれています。また、このようなサービスは産業面のことだけではなく、同時に生活者の利便性、安全性という社会基盤としての公共的な場にも広がりをもつようになってきています。こうした現状から、産業におけるサービスの創出はあらたな経済的価値を生み出して社会を活性化させるとともに、行政、医療、福祉等のサービスを通じて生活者の安心につながる社会の豊かさという公共的価値を与えるものと期待されます。

近年の経済や社会の秩序は情報社会ともいえるほどに情報技術によるところが大きく、その発展が未来の豊かな社会基盤を支えることといえますが、一方で、このような情報技術によるサービスの創出が産業や社会に急激な変化をもたらすことも、われわれが経験してきたところです。現在、これらのサービスの提供が個別的であることから、これを改善して効率的にサービスを提供するために、また、これまでにはないようなあらたなサービスを創出するためにも、サービスを対象とした科学的手法が求められています。今後のサービスのあり方を考えるときには、経済的価値を求めることだけでなく、社会制度の健全度、生活者の満足度といった公共的価値といった観点も重要になってくるでしょう。

このようなことから、東京大学産学連携本部では、「学」におけるサービスを科学する学術的検討と、「産」におけるサービスを実現する技術開発とを連携させ、社会のイノベーションに向けた共同研究を生み出すことを目的としてサービスイノベーション研究会を発足させました。

サービスに特徴的な無形性、変動性、同時性、消滅性等を普遍的に捉えてイノベーションを導くためには、これらの特性を考慮した科学的方法論を確立する必要があるでしょう。そのために、対象の定量化、分析、数理モデリング、最適化、サービス提供等の課題に取り組むこととしています。研究会では、中核となる大学教員と参画企業担当者がサービス創出によるイノベーションを目指して共同で研究を進めてゆくこととしています。この研究会の成果にご期待下さい。