サブワーキンググループのご紹介

SWG-2:組織、行動、知識の可視化

 

サービス知の見える化技術

サービスの大きな特徴として、物理的実体を伴わない抽象的な概念であることがあげられます。そのため、サービスイノベーションを実現するためには、サービスシステムの構造を人間の感覚によって把握できるようにする「見える化」の操作がまず必要であると考えます。

そこで、SWG-2ではサービスパフォーマンスの定量評価の前提となる、サービスシステムの定性的構造の特定、表現、可視化などに関連する課題をとりあげることとしました。すなわち、サービスシステムのどのような属性に着目したら、パフォーマンスの評価や制御に役立つ構造が把握できるかという観点で検討を続けています。ここで見える化の対象になると考えられるのは、サービス業務で用いられる知識やスキル、あるいはサービスの過程で行われるタスクやコミュニケーションといった概念です。こうした概念の相互関係を科学的に把握することが、サービスイノベーションの第一歩になると考えています。さらにこうした整理によって、サービスイノベーションが扱うべき分野の鳥瞰図が描けるのではないかと期待しています。

SWG-2 メンバー

主査: 古田 一雄 教授(工学系研究科)
幹事: 日高 一義 部長(日本IBM)
メンバー: 新井 民夫 教授(工学系研究科)
  杉原 厚吉 教授(情報理工学系研究科)
  立野 伸治 氏(富士通)
  小西 弘一 氏(日本電気)
  平井 千秋 氏(日立製作所)
  中村 英史 氏(日本IBM)
  大澤 幸生 准教授(工学系研究科)
  橋本 康弘 講師(工学系研究科)
  菅野 太郎 助教(工学系研究科)

 

事例1:エスノグラフィックな観察によるサービスタスクの分析
古田一雄(工学系研究科 システム量子工学)

エスノメソドロジーとは、人間の活動の中で表現される常識、知識、使用方法など、状況に特有の活動を詳細な観察に基づいて見つけだし、説明する研究である。このような研究を実施すための手法としては、通常のフィールドワークと同様に作業現場への参加を通した観察やビデオ、音声記録の分析、さらにはインタビューなどの方法がとられ、これらのデータを基に何らかのルールが存在することが実証される。

我々グループは、公共サービスの一つである航空管制業務をとりあげ、業務遂行の様子を観察、記録し、さらに管制官の思考、判断を認知科学的知見に基づいてモデル化することによって、航空管制というサービスに固有の知識、技能、過程などの論理構造を明らかにした。このような手法は、他のサービスタスクの見える化に対しても有効であると期待している。

参考文献

井上 諭, 青山久枝, 蔭山康太, 古田一雄, 航空路管制業務におけるレーダー管制官のタスク分析と認知モデル構築に関する研究, ヒューマンインタフェース学会誌, 8, 283-294 (2006).

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